シニア科
ワンちゃん、ネコちゃんは人間の4~5倍もの早さで歳をとると言われており、年齢を重ねると様々な病気や体の変化が起こります。
当院ではシニアのワンちゃんに向けた獣医療をご提供するシニア科を開設しています。
当院のシニアのワンちゃん・ネコちゃんへの取組の一部をご紹介します。
シニア生活のサポート面
1.生活スタイルのご相談
シニア期には、お家での過ごし方やお散歩の仕方、病気との付き合い方など、様々な変化が出て来ます。
特に高齢期になると痴呆や介護の問題が出てくることもあります。
飼い主様と動物の楽しい暮らしの為に様々なご相談をお受けしています。
2.食事管理のご相談
高齢になるとご飯を食べない、量が減ったなどのご相談を受けることが多くなります。
持病がある場合は療法食などの食事療法も選択肢の一つとして必要となります。
毎日のことであり、健康の基本でもある食事についてのご相談をお受けしています。
3.認知症のご相談
最近はワンちゃんの認知症が急増しています。
認知症が進行すると、飼主様のご負担も増え、ワンちゃんとの生活が辛いものになってしまうケースも少なくありません。
認知症の症状は一見して認知症によるものと気づかないものが多いため、飼い主様が気づかない間に認知症が進行していたというケースも多いです。
現在はお薬やサプリメントなどで認知症の進行を遅らせたり、症状を緩和することができます。
気になることがあった場合は、まずはご相談ください。
4.関節のご相談
シニア期になると 骨関節炎や筋力の低下やじん帯が弱くなることにより、足をかばいながら歩く状態が見られるようになります。
その為歩くのを嫌がるようになります。
この症状に関して鎮痛剤やサプリメント等での治療についてご相談させていただきます。
専門的な診察をご希望の場合は、整形外科担当医による専門的な診療も受診いただけます。
5.口腔ケアのご相談
加齢に伴い、歯石が付着してきます。
加齢により免疫力が低下することで、歯周病など口腔内に関するトラブルも増えてきます。
歯周病の進行は全身に影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。
口臭が気になるなどのお悩みに関して当院では口腔ケアのご相談をさせていただきます。
シニアの病気や治療でのサポート面
1.シニアの動物に優しい診療
高齢になると様々な病気になる可能性が高くなってきます。
ご来院時、診察時にはできる限りストレスがかからないように、動物の負担を考慮した診療を行っております。
2.病気の早期発見のための定期検診
高齢になるにつれ様々な病気を発症するリスクが高まります。
心臓や内臓疾患などは発見が遅れると慢性化してしまいます。定期的に健康診断を行うことで病気の早期発見が可能です。
病気の早期発見、早期治療を目指しましょう。
3.負担の少ない検査
高齢になるとちょっとした検査が、動物へのストレスへ繋がり負担となるケースがあります。
当院ではできる限り検査においても動物へ負担が少なくできる機器や方法を用いて行っております。
4.負担の少ない治療
若い頃の治療法と高齢になってからの治療法は、体力や免疫が低下の状況を見極めながら方針を変えてあげることも必要です。動物の状態や飼い主様のご要望に応じ、負担の少ない治療法含め、複数の治療法をご提示いたします。
5.負担の少ない手術
当院では手術時にもできる限り動物への負担の少ない方法を取り入れています。
麻酔時間の短縮や、体内に糸を残さない方式、手術時間が短くなる方法など、動物への負担軽減を常に考えております。
シニア期の健康診断の重要性
健康な時期の検査数値を把握しておきましょう
定期的に健康診断を受けておくと、健康な時期の検査数値を把握しておくことができます。
教科書などに記載のある「標準的な検査数値の範囲」は存在しますが、動物個々でその正常値が異なります。健康時のデータを把握していればその子の適正範囲が分かりますので、異常があった場合にも安心です。
シニア期は生活スタイルが変わっていきます
年を重ねるにつれて、徐々に様々な機能や免疫力が弱くなっていくため、生活環境、習慣も、体の変化に合わせて変えていく必要があります。
病気だけではなく認知症の可能性などもありますので、日頃の生活の様子も合わせて獣医師にご相談ください。
早期発見、早期治療が重要です
心臓や腎臓の病気、がんなどは、発生した初期段階では症状が見た目にはよくわからないことがあります。痛みなどの症状が出るころには手遅れとなることがありますので、健康診断での早期発見が大切です。
定期的に健康診断を受診して、病気の早期発見を行いましょう。
ネコちゃんは症状や痛みを隠す動物です
ネコちゃんは症状や痛みなどを隠す特徴があります。
そのため、症状が出て来た時には既に病状が進行してしまっていることがよくあります。定期的に健康診断を受診していただくことで病気の早期発見ができます。定期的に健康診断を受診してください。
シニア特有の病気を見つける検査項目
腎臓疾患、心臓疾患、腫瘍などの特に高齢期に多い病気でも血液検査で見つけることができるようになってきました。
これらは麻酔などをかけることもないため、動物への負担も少なくて済みます。
健康診断では、身体検査はもちろん、血液検査やレントゲン検査、エコー検査などを組合わせて行っていきます。
定期的な検査を行ってあげましょう。
加齢に伴う体の変化
口腔内の変化
シニアになると、定期的なデンタルケアをしていても、歯石の付着や歯周病などのお口のトラブルを抱えている子が非常に多くなります。
放っておくと、悪臭の原因だけでなく心臓病の原因にもつながります。当院では口腔内の状況を調べる簡易デンタルチェック、食事療法、歯磨き指導、歯石除去処置(スケーリング)なども行っております。
関節の変化
年をとると、関節の軟骨部分がすり減ったり破壊されたりして、股関節・肘・膝・肩など様々な関節に痛みが出る「変性性骨関節症」という病気である可能性もあります。
若い頃に比べ動きが悪くなり、遊ぶことも少なくなると、これを老化現象と勘違いしがちです。
お散歩時などに注意して観察してあげましょう。
心臓の変化
心臓は生命を維持する上でとても大切な臓器のひとつです。
チワワやシーズー、マルチーズなどの小型犬は「弁膜症」という病気になりやすいといわれています。
咳をするようになった、お散歩の途中で疲れやすいなどの症状が出てきます。
一度心臓病になると完全に治すことは難しいですが、早期発見することでお薬や処方食での治療を始めれば進行を遅らせることができます。
眼の変化
代表的な病気として「白内障」と「核硬化症」があります。
核硬化症は水晶体というレンズが硬くなり、すりガラス状に見えるようになる老齢性の変化です。
同じような眼の見え方で気をつけなければならないのが白内障です。
進行すると視力低下や失明したり、炎症を起こすと痛みを伴ったりします。白内障を早期に発見できれば進行を遅らせる点眼薬もあります。
腫瘍ができやすくなる
ワンちゃんの死因第1位はがんです。加齢と共にがんはできやすくなります。
比較的異常を確認しやすい体の表面にできるがんもあれば、肺・肝臓・骨など眼に見えない臓器のいたるところにがんはできます。
特に肝臓や脾臓などはがんができても症状が出ることはなく、気づいた時には手遅れということもよくあります。
がんを早期に発見できれば手術、抗がん剤、放射線治療などで完治または進行を遅らせることができます。
当院で行っているシニアのワンちゃん・猫ちゃんの治療例
眼科分野
- 角膜縫合
- 角膜癒着除去
- 眼球摘出
- 眼瞼フラップ
- 眼瞼切開
- 眼瞼切除
- 瞬膜腺突出整復
- 瞬膜フラップ
- 瞬膜固定術
- 瞬膜切除 など
腫瘍関連
- 右腋窩
- 右膝窩腫瘤切除(血管肉腫)
- 眼瞼Mass切除
- 眼瞼腫瘤切除
- 胸部腫瘤切除術
- 筋肉脂肪腫
- 指間腫瘤切除
- 脂肪腫摘出
- 耳介腫瘤切除
- 耳組織球腫切除
- 前肢腫瘤切除
- 前肢第3指切除
- 乳腺腫瘍切除
- 尿道腫瘍+尿道カテーテル留置
- 背部腫瘤切除術
- 皮膚腫瘍切除
- 肥満細胞腫
- 腹腔内腫瘤切除
- 頬腫瘤切除
- 肛門腫瘍切除
- 肛門周囲腺腫切除
- 脾臓摘出
- 膀胱腫瘤切除 など
消化器関連
- 誤食による胃切開
- 口腔内フラップ
- 小腸切除
- 消化管内異物摘出
- 腸重積
- 腸切開
- 腸切除
- 腸内異物除去
- 直接皮弁
- 直腸引き出し術
- 直腸固定、直腸脱整復
- 直腸潰瘍切除
- 内視鏡(異物除去)
- 内視鏡胃腸検査(粘膜生検含む) など
神経・整形外科関連
- 推体固定
- 脊椎造窓術
- 背側椎弓切除
- 骨折整復術(ピンニング)
- 膝蓋骨脱臼整復手術
- とう尺骨骨折
- ピンニング
- レッグぺルテス
- 下顎ワイヤリング
- 下顎骨折整復術
- 下顎切除
- 顎脱臼整復
- 股関節脱臼整復術
- 後肢骨折整復
- 後十字靱帯部分断裂整復術
- 骨折整復
- 骨折整復(外固定)
- 骨頭切除
- 骨盤骨折整復術(仙腸関節ビス止め)+プレート固定
- 前十字靱帯断裂整復術
- 創外固定
- 足根関節脱臼整復
- 大腿骨骨頭切除
- 断脚
- 断指
- 中手骨骨折整復
- 半月板切除術
- 膝蓋骨脱臼整復術
- 橈骨尺骨骨折
- 橈尺骨ピンニング など
その他
- アキレス腱断裂
- アブセス切除
- 片側椎弓切除術
- がま腫摘出
- 去勢手術
- 鼠径ヘルニア整復
- 停留精巣摘出術
- マイボーム腺腫切除術
- リンパ節切除
- 胃切開
- 胃切開(異物除去)
- 胃内異物摘出(内視鏡下で)
- 胃捻転
- 胃幽門部拡張術
- 陰嚢切除
- 横隔膜ヘルニア整復術
- 会陰へルニア整復
- 会陰尿道造設術
- 会陰尿道婁形成術
- 回転皮弁
- 外耳道切開
- 外耳道切除
- 急性犬糸状虫症
- 子宮水腫
- 子宮蓄膿症
- 子宮捻転
- 糸状虫つりだし術
- 耳道拡張術
- 耳道切開
- 耳道切除
- 潜在精巣
- 鼠径ヘルニア整復
- 唾液腺摘出
- 脱肛整復
- 帝王切開
- 軟口蓋過長切除
- 尿石除去
- 尿道・膀胱切開
- 尿道脱整復
- 皮膚フラップ
- 皮膚潰瘍摘出術
- 避妊手術
- 腹壁ヘルニア整復
- 狼爪切除術
- 肛門嚢摘出術
- 肛門嚢切除術
- 膀胱結石摘出
- 膀胱切開
- 膀胱破裂整復
- 臍ヘルニア整復 など
これら以外にも様々な手術・処置・治療を行っております。
高齢のワンちゃんに多い病気
脊椎の病気(変形性脊椎症など)
老齢期に多く見られ、腰痛や歩行障害などが起こります。重症化すると後肢がマヒし、寝たきりになってしまうこともあります。
生殖器の病気(子宮蓄膿症:女の子)
細菌感染などで子宮の中に、膿が溜まる病気です。避妊手術をしていない6歳以上のワンちゃんに多く見られます。ホルモンバランスの乱れや、高齢に伴う免疫の低下で細菌に感染するリスクが高くなるといわれています。
生殖器の病気(前立腺肥大:男の子)
オス犬の膀胱の後方で尿道を囲むように存在する前立腺が徐々に肥大してくるのが前立腺肥大です。
進行すると、排便・排尿障害や細菌感染を伴う前立腺膿瘍を引き起こすこともあります。
肛門臭御の病気(会陰ヘルニアなど)
去勢手術をしていないオスがかかりやすくなります。
高齢になり、おしりの周りの筋肉が緩んできたためにできた穴(ヘルニア孔)から腸や膀胱が脱出し、排便・排尿障害を起こします。
腫瘍(乳腺腫瘍、リンパ腫など)
腫瘍は癌や肉腫とも呼ばれ、高齢になると発生しやすくなります。
乳腺腫瘍はメスに最も多く発生する乳腺にできる腫瘍です。
特に避妊をしていないメスでの発生率が高い傾向にあります。その他にも人間と同様、様々なところに腫瘍が発生します。
心臓の病気(僧帽弁閉鎖不全症など)
僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間に存在する弁で血液が逆流しないようにする重要な役割を果たしています。
この弁が異常をきたし心不全による咳・運動不耐・失神・肺水腫などの症状が出ます。
関節の病気(変形性関節症など)
主に、中高齢期の股関節・肘・膝・肩に良く見られ、関節の軟骨組織がすりへったり、破壊されたりすることにより、関節が変形し様々な部位に発生して関節の動きが悪くなったり慢性的な炎症や痛みを伴います。
お口の病気(歯周病など)
歯と歯ぐきの間に入り込んで増殖した細菌によって歯ぐきが炎症を起こし、歯を支える部分が破壊されていく病気です。歯に溜まった歯垢や歯石が主な原因となります。
上記の病気は一例です。また、病気を予防するためにも日頃のケアに注意しましょう。